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ところで、イサーン地方には農業以外にこれといった産業がありません。昔は自給自足の農業で、人々は田植えや刈り入れなどを共同で行うのどかで平和な生活をしておりました。しかし、イサーン地方は雨が少なく、地味の乏しい大地には塩が含まれているため、その生産性は低く、人々の生活は決して豊かなものではありませんでした。
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今でもバンコクで働く出稼ぎ労働者の多くはイサーン出身であります。特に私たちが心配していることは、両親がそろって出稼ぎにでてしまい、祖父母や親戚に預けられて育つ子が少なくないこと、最近は沈静化してきましたが出稼ぎに出た若者が覚醒剤を農村に持ち込むこと、貨幣経済の急速な流入により村の伝統文化が崩壊していくことなどであります。そこで、イサーン地方にも工場を誘致しよう、という考えもあると思いますが、すでにタイの人件費は中国のそれに太刀打ちできませんし、環境問題なども含めて、単純な工業化は解決策にはなりません。
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<農業技術学部農場予定地>
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タイは世界最大の米輸出国ですが、イサーン地方の主食はモチ米です。また、自然環境は前述の通り過酷な条件下にありますが、今日まで稲作を続けてきた実績があるわけですから、さらに創意工夫により伝統を踏まえた新しい農業を創出することは可能であると思います。そして、この新しい農業にこそ、バランスの取れた発展、人々の豊かな暮らしが期待できるのではないかと思います。
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さて、ぴっぱら奨学金の基本方針は「教育」であります。もちろん、農業開発に取り組むNGOもあり、相応の成果を挙げております。しかし、ぴっぱら奨学金は教育支援のみを行います。農業開発や地域開発は「そこに住む人々」がやらなければなりません。私たちができることは、その人材を育成するお手伝いまでです。
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前書きが長くなりました。ラーチャパット・マハサラカム大学には一昨年11月に「農業技術学部」が誕生しました。農学部ではなく農業技術学部というところがミソです。農学がまさしく学問としての農学であり、理論を学ぶものであるのに対して、農業技術学は理論的裏付けのある実践を通して、現実の田畑で役に立つ農業を学ぶものであります。農業技術学部は地域の発展に貢献しうる人材を育てる学部であります。今年度は105名の学生が学んでおります。
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ソムマット学部長
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実は同大学の近くに内務省所管の32ヘクタール(約32町歩)の遊休地があり、これが3年前に同大学に移管されました。同大学ではこの地をNongNo農場と名付け、農業技術学部のキャンパスとすることにし、初代学部長は農場に泊まり込み、自らブルドーザーを運転して荒れ地を開墾したそうです。
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今後は学部のキャンパスをNongNo農場に移転し、伝統農業と近代農法とを実践的に学べるようにしたいとのことです。たとえば、数人のグループごとに1ライ(160平米=約48坪)の農地を与え、全てを学生の判断と責任で農業経営を実践させる、という「1ライ農場」という構想があります。同学部の学生は農家の子が多いそうですが、作付や収穫などの実際だけでなく、おそらく土の勉強から生産計画や食品経済までをも、体験的に学ぶことができるでしょう。 また、タイ国内外の大学やNGOなどとのネットワーク化を進め、限られた条件の中でも国際的な教育環境を整えることを念頭においています。
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しかし、現在は2代目学部長のソムマット先生(46才、獣医学)以下、専任のスタッフは数名しかおりません。他の学部や他大学と掛け持ちの先生もおります。隣接するマハサラカム大学が独立行政法人化し、国立大学の1.6倍という高給で優秀な人材を集めていることも影響しているそうです。
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ぴっぱら奨学金として具体的にどのような協力ができるか、これから同学部と充分に協議を進めて参ります。中規模大学と小さなNGOが協力して、地域に育まれ、そして地域を育てる人材の学びの場を創っていきたいと思っております。引き続き状況をご報告申し上げますので、各位にもいっそうのご支援・ご指導をお願い申し上げます。
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ぴっぱら奨学金:西村徳城
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